ドッグフードにおける『添加物の意味』を犬の管理栄養士が解説

mutenkanoimi
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前回の記事では、ドッグフードにおける添加物を使用する目的をお伝えしました。
今回は、添加物の役割についてお話しします。
前回の記事を読んでいない方は、先に前回の記事を読まれてからの方が、今回のお話がわかりやすいかもしれません。

目次

ドッグフードに使われる添加物リスト

ペットフード安全法によりドッグフードのパッケージには添加物を含む原材料の表示が義務付けられ、どのような原材料が使われているか簡単に確認できるようになりました。

ここでは目的別に、良く使われている添加物と危険度について紹介していきます。

①栄養添加物

食材だけでは補えない栄養を補充する目的で使われる。
栄養素を調整し、『総合栄養食フード』として完成させることができます。
※無添加を含むほとんどのドッグフードに添加されている添加物です。

良く使われる添加物
ビタミン、ミネラル、アミノ酸、必須脂肪酸、ω3脂肪酸 など

②品質保持の添加物

ドッグフードの鮮度を保つ目的で使われる。
特に酸化防止剤はドッグフードに必須の添加物です。
ただし、保管期限を短く設定することで、酸化防止剤以外の添加物は避けることができます。
③嗜好性増進の添加物

良く使われる添加物
保存料、酸化防止剤、保湿剤、乳化剤 など

保存料

カビや細菌などの微生物の増殖を防止するために使われる。
水分量が多い状態で保管する≪セミモイスト、ソフトドライフード≫などで使われる。

ソルビン酸

脂肪酸の一種で保存料として使われる。カビや菌の発育を抑える効果がある。
人が食べる食品に使える食品添加物として許可されている。
食品に使う場合1日の摂取許容量が設定されているが、ペットフードに使う場合の基準値はなく、
各メーカーの判断に委ねられている。

ソルビン酸カリウム

ソルビン酸とほぼ同じだが、より水に溶けやすい性質を持っている。

安息香酸ナトリウ

保存料として使われる。
ビタミンCと同時に摂取すると有害物質のベンゼンが作られる。

防腐剤

微生物の増殖を抑え腐敗を抑える目的で使われる添加物

亜硫酸ナトリウム(亜硫酸)

ワインの酸化防止剤として有名な亜硫酸ナトリウムはペットフードの防腐剤として使われている。
ソルビン酸カリウムと一緒に使われている場合、反応して発がん性物質を生成してしまうことが知られている。

酸化防止剤

フードに含まれる脂質の酸化を防ぐ目的で使われる。
ドッグフードには不可欠な添加物だが、使われる成分に注意が必要

エトキシキン

国内では食品添加物としての使用は認められていない。
過剰摂取すると腎臓機能に影響を及ぼすことがあり要注意の添加物
ペットフードに使用する場合上限値が定められている。

BHA/BHT

酸化防止剤として使われる。
BHAはラットに対し発がん性が認められており、
ともに過剰摂取すると健康への悪影響が懸念される添加物
ペットフードに使用される場合上限値が定められている。

没食子酸プロピル

BHAやBHTより効果が強力で、食品で使う場合上限値が定められている。
過剰摂取すると急性毒性や染色体異常を引き起こす可能性がある。

ミックストコフェロール/ローズマリー抽出物

天然由来の添加物。酸化防止剤として使われる。
健康に対する危険性はないが、化学物質由来のエトキシキンやBHA/BHTと比べ効果が弱く、
開封後の賞味期限が短くなる。

酸化防止剤はフードに必須の添加物だけど使われる添加物に注意が必要です。
エトキシキンやBHA/BHTは効果が強い代わりに健康被害も懸念される添加物。
開封後は1カ月以内に使いきる必要がありますが、
健康被害のない、ミックストコフェロールやローズマリー抽出物を使っているドッグフードを選びましょう。

保湿剤

フードの水分を保持し、しっとろとした食感を保つために使われる。
≪セミモイスト、ソフトドライフード≫で使われる。

グリセリン

アルコールの一種で保湿剤として使われる。
医薬品やシロップの材料にも使われている。
健康に対する危険性が少なく安全に使えると言われている添加物。

ソルビトール

りんごや梨、モモなどに含まれる天然の食品添加物
危険性は高くないが体内で消化されないので、摂取しすぎるとお腹がゆるくなったりする事も。

プロピレングリコール

アルコールの一種で保湿剤として使われる。
毒性が低く医薬品の添加物として使われているものの、
猫に対しては様々な健康被害を及ぼすことが知られており使用禁止物質に指定されている。

柔らかいフードにの製造に使われる添加物です。
危険性が高いものはありませんが、猫に対して悪影響を与えるプロピレングリコールは要注意
製造において必須の添加物ではないので、出来れば含まれていないドッグフードを選びましょう。

乳化剤

水と油を混ぜて均一に保つ性質があり、
フードの品質を一定にする目的で使われる。
個別名ではなく『乳化剤』という一括名で表示されることが多い。

グリセリン脂肪酸エステル

グリセリンと脂肪酸を反応させ合成したもの
グリセリンと同じく健康被害への危険性は少ないとされる。

レシチン類

大豆の種子や卵黄から抽出して得られるレシチンを主成分とするリン脂質
大豆由来レシチンの場合、大豆アレルギーが発症するリスクがあるので要注意

危険性は少ない乳化剤ですが、一括名で表示されてしまうのが困りもの
アレルギーリスクのある成分もあるので乳化剤が入っているフードを無理に選ぶ必要はありません。
ドッグフード製造において必須の添加物ではありません。

PH調整剤

フードのPHを調整することで、腐敗や変色を防ぐ。
『PH調整剤』として一括表示される。

個々の添加物の安全性は問題ないが栄養バランスが崩れてしまう成分が含まれることも。
※PH調整の為に『リン酸塩』を使用されることが多く、リンの過剰摂取になる危険性があります。

嗜好性向上の目的で酸味料として使われることもあり、その場合『酸味料』と一括表示される。

③嗜好性増進の添加物

食欲を増進させたり見栄えを良くする目的で使われる
どちらかというと犬よりも飼い主さんに選んでもらうために使われているケースが多いです。
保存料などと同じく無添加ドッグフードでよく悪者扱いにされている添加物です。

よく使われる添加物
香料、着色剤、発色剤 など。。。

香料

美味しそうな香りを付ける目的で使われる。
『香料』と一括表示され、ほとんどの場合複数の成分を合わせて香りが作られている。
どのような成分が使われているかは製造メーカーにしかわからないため過剰摂取には注意が必要。

着色料

フードの色を整え、美味しく見せる目的で使われる。

食用赤色2号

発がん性リスクが指摘され米国では使用が禁止されている

食用黄色4号

アレルギー症状を引き起こす可能性がありヨーロッパでは使用規制がある。

食用青色1号

発がん性が指摘されていてヨーロッパでは使用が禁止されている。

食用〇〇号はタール系着色料と呼ばれたくさんの食品に使われている。
発がん性があるものや蓄積して腎障害を起こすものがあり注意が必要

カラメル色素

カラメル色素は『Ι、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ』の4種類あるが表示上はどれを使用しているかわからない。
Ⅲ、Ⅳは製造の過程で微量の発がん性物質が生成される。

発色剤

肉類の変色を防ぎきれいな色を保つために使われる。

亜硝酸ナトリウム

発がん性リスクが懸念されていてペットフードに使用する場合100㎍/gの上限値が定められている。

増粘安定剤

とろみをつけたり、しっとりとした食感を出すためウェットフードに使われる。

④機能性向上の添加物

犬の体調を整えたり健康を維持したりするために使われる添加物
特定の目的のために作られているドッグフードに多い
(関節保護、腸内環境改善、肥満防止)など。。。
愛犬の状態に合わせて是非取り入れたい添加物です。

グルコサミン、コンドロイチン

関節の保護

セルロース

食物繊維、腸内環境の改善

他にもオーラルケアのサポートをする成分が入っていたり、免疫力を高める成分など色々な添加物があります。

⑤その他に覚えておきたい添加物

セレン化合物

セレンは身体に必要な必須ミネラルの一つ
ただし摂取しすぎると嘔吐や下痢、脱毛など中毒症状が起きてしまう。
ペットフード安全法で『必要最小限の添加』とするよう明記されている。

添加物は人が食べる食品にも多く使われていてドッグフードにも必須の成分です。
ただし不要だったり健康リスクがわからない添加物があるのも事実
犬にとって何が必要な添加物かを理解することが大切です。

ドッグフードに必須の添加物

①栄養添加物

②品質保持の添加物(酸化防止剤)
※ミックストコフェロール/ローズマリー抽出物が使われているフードを選ぶこと

入っていると嬉しい添加物

④機能性向上の添加物

出来れば避けたい添加物

②品質保持の添加物(酸化防止剤を除く)

③嗜好性増進の添加物


まとめ

添加物についてのまとめ

  • 添加物はフードに不可欠な成分
  • 添加物の有無よりも総合栄養食がどうかが重要
  • 無添加ドッグフードにも添加物は含まれている
  • 酸化防止剤は必須。使われている成分を気にしよう
  • どんな添加物が使われているかはパッケージで確認できる

添加物のお話はいかがでしたでしょうか?

無添加ドッグフードは確かに健康に配慮されたフードであるものの
ドッグフードを選ぶときは無添加という言葉に惑わされず、愛犬にとって最適なドッグフードを選ぶことが大切です。

添加物について理解を深め、ドッグフードを選ぶ為の参考にしてもらえたら嬉しいです。



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