ドッグフードに理想的な3大栄養素のバランスを徹底解説【犬の管理栄養士】

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3大栄養素とは
『タンパク質』
『脂質』
『炭水化物』
の事。
身体を維持するためのエネルギー源となる栄養素です。

人の場合、
健康的な食生活やダイエットをするときに
『3大栄養素(PFC)バランスを意識する』
などとも言いますが、
犬の場合も同じようにPFCバランスが重要になってきます。

では、犬の理想的なPFCバランスはどのような割合なのか?
今回はPFCバランスについて考察していきます。

『PFCバランス』とは
Protein/タンパク質)、(Fat/脂質)、(Carbohydrate/炭水化物)
3大栄養の頭文字をとって”PFC”バランスと言います。

目次

必要なPFCバランスは?

平均的な食事の3大栄養素

理想的なPFCバランスを考察していく前に、
まず≪人間、犬、猫≫のPFCバランスの違いについて理解しましょう。

私たち人間と同じように犬、猫は
『タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル』
の5大栄養素をバランスよく食べ物から摂取する必要があります。
※5大栄養素については詳しくはこちら→犬に必要な6大栄養素とは? 

しかし、人間、犬、猫ではそれぞれ必要な栄養バランスが異なるのです。

人間は雑食

人間の主食はごはん・パン・麺など 炭水化物が中心です。
タンパク質も不可欠な栄養素ではありますが
猫や犬と比べると割合は少なくなります。

猫は肉食

猫はもともと肉食で、
人間や犬に比べて多くのタンパク質を必要とします。
また肉食の猫や犬の場合、
炭水化物はタンパク質を変化して体内で生成出来るため、
必要な栄養素ではありません。
ただし猫の場合タウリンを体内で作ることができないため、
タウリンを十分に含んだフードを与える必要があります。

犬は肉食寄りの雑食

犬は人間との共同生活の中で雑食性が進み、
全体的なバランスは人間に近いものの
よりタンパク質を多く必要とします。
また、犬の場合も猫と同じく炭水化物は必須ではありません。
体内でエネルギー源となる『グルコース』を作ることができるからです。

実際に市販のドッグフードにおいても
上の表より炭水化物の割合が少ない製品が多いです。

犬は人間と共同生活をしていく中で食性を適応進化させてきました。
良く『犬は肉食だから穀物(炭水化物)は消化できない』と言われますが、
実際は穀物も消化することができるのです。

犬に必要な3大栄養素

それでは、理想的な栄養バランスがどの程度か、
いくつかのデータを元に考察していきます。

上のグラフは、それぞれ信頼のある機関が公表、製造しているドッグフードの栄養バランスです。

AAFCO 2016年栄養基準

AAFCOとは米国飼料検査官協会の事を指します。
「The Association of American Feed Control Officials」
の頭文字をとってAAFCO「アフコ」と読みます。
ペットフードの栄養基準やラベル表示に関する基準を制定しているアメリカの団体で、
日本のペットフード公正取引協議会もAAFCOの栄養基準を採用してます。

そんなAAFCOでは、成犬に必要な栄養を
・タンパク質:18%以上
・脂質:5.5%以上
・炭水化物:未設定(必須栄養素ではないため)

と設定しています。
ただしAAFCOが定めている基準は、
あくまでも最低限必要な数値ですので誤解がないようしなくてはいけません。

ロイヤルカナン 

ロイヤルカナンは数多くの療法食を開発し
最先端の栄養学を研究しているペットフードブランド。
多くの獣医から信頼されているメーカーです。
そんなロイヤルカナンからは
『理想的な中型成犬の栄養バランス』として以下の数値を示しています。

  • タンパク質 約25%
  • 脂質 約12%
  • 食物繊維 約5~7%
  • カルシウム 約1.1%
  • リン 約0.8~0.9%

AAFCOと比べてタンパク質や脂質の割合が
高くなっているのが特徴です。
子犬の場合さらにタンパク質の要求量が
多く必要になります。

オリジン オリジナル

オリジンはカナダにあるチャンピオンペットフード社
製造しているプレミアムドッグフードです。
数々のペットフードに関わる賞を受賞し、
世界で高く評価されています。

オリジンの特徴は
『動物性たんぱく質を80%以上配合した高タンパク質フード』
犬の祖先が食べていた食事に近い栄養バランスを実現しています。
そんなオリジンの特徴としては、
炭水化物が19%とかなり少ないことです。

AAFCOやロイヤルカナンと比べても
タンパク質、脂質の割合が非常に高いことが特徴です。

考察

AAFCOについてはお伝えしたように
『犬が健康を維持するために最低限必要な栄養バランス』
なので理想的なバランスとは分けて考える必要があります。

ペットフード業界をけん引する
『ロイヤルカナン』『オリジン』

2つのブランドを指標とするのがおすすめです。

ドッグフードは『高タンパクー低脂質ー低タンパク質』が理想的な配分とされています。
ただし、どのぐらいの割合が高タンパク質なのか?明確な基準はありません。
当サイトでは、理想的な栄養バランスを『ロイヤルカナン』『オリジン』を基準としてドッグフードの評価を行っています。→当サイトのドッグフード製品ランク

食いつき選択試験の結果

海外の研究で、三大栄養素の割合を変えた食事を犬に選択させ、どのフードに一番食いつくか実験を行いました。
結果、犬が選んだ食事の三大栄養素の割合は、
タンパク質48%、脂肪41%、炭水化物11%
という結果でした。

この研究結果からは、
高タンパク高脂質のフードが犬の好みと言えるのかもしれません。

オオカミの食事

犬の祖先であるオオカミの食事はいかがでしょうか?

犬の祖先といわれる『ハイイロオオカミ』の食事を研究した報告では三大栄養素の割合は、
タンパク質が71%、脂肪が27%、炭水化物が2%
であると言った研究結果が出ています。

ほぼ炭水化物が含まれていないことがわかりますね。
ただしオオカミの場合は
『狩り』で獲物をとらなければいけない性質上、
毎日食事を得られるわけではありません。

そのため現代の犬とオオカミでは、
理想的な栄養バランスは若干異なるのかもしれません。

市販されているドッグフードの平均栄養バランスは?(独自調査)

最後に、当サイトのデータベースを使い市販されているドッグフードの平均値を割り出しました。

全411種類の市販ドッグフードについて
栄養バランスの平均値を算出したところ、
タンパク質:26% 脂質:32% 炭水化物:42%
という結果が出ました。

この数値は
ロイヤルカナンとほぼ同じ数値になっています。
ロイヤルカナン
タンパク質:27% 脂質:32% 炭水化物:41%

この結果から、
市販されているドッグフードの中で
最も主流となる栄養バランスは
ロイヤルカナンが提供している数値だと言えるでしょう。

結論

ここまでいくつかのグラフを見てきました。
グラフから見えてきた結果として、

栄養バランスタンパク質脂質炭水化物
最低限必要(下限)21%16%64%
標準27%32%41%
犬が好む栄養バランス(上限)48%41%11%

目安としては≪標準~上限≫までの栄養バランスに収まっているドッグフードを選ぶと良いでしょう。
ただし、犬の健康状態やライフスタイルによって適切な栄養バランスは異なります。

栄養バランスの整ったフードを選ぶための
指標として参考にしていただけたら嬉しいです。

栄養バランスの計算方法

ここまで紹介してきた栄養バランスの割合について、
何をもとにした数値か疑問に思われた方もいたのではないでしょうか?
それも当然。
ドッグフードのパッケージを見ても栄養バランスなんてどこにも記載されていません。

ただし、パッケージに記載されている情報から
簡単な計算で栄養バランスは算出することができます。
最後に、計算方法について紹介します。

第1ステップ:炭水化物の算出方法

ドッグフードのパッケージには

  • タンパク質
  • 脂質
  • 繊維
  • 灰分
  • 水分
  • カロリー

について表示義務がありますが、
炭水化物は計算して出さなければなりません。

炭水化物量の計算式 100%−(タンパク質 (%) +脂質 (%) +灰分 (%) +水分 (%) )=炭水化物(%)

炭水物量が算出できれば
≪タンパク質、脂質、炭水化物≫
と必要な数値がそろいます。
ここから栄養バランスを計算するために、
それぞれの代謝エネルギーを計算していきます。

第2ステップ 代謝エネルギーの計算

≪タンパク質、脂質、炭水化物≫の数値がわかった後は
それぞれの代謝エネルギーを算出します。
3大栄養素の栄養バランスとは、
3種類の栄養素を合計したエネルギー量(カロリー)の栄養配分の事を指すのです。

代謝エネルギーとは?
タンパク質、脂質、炭水化物から得られるエネルギーの事を指します。
車でいうと車体を動かすための『ガソリン』のようなもの
それぞれの代謝エネルギーの合計が『カロリー』と言われるものです。

≪タンパク質、脂質、炭水化物≫
から得られるエネルギー量はそれぞれ異なるため、
計算するためには換算係数を掛けてあげる必要があります。

タンパク質:×4
脂質:×9
炭水化物:×4

例:タンパク質25% 脂質12% 炭水化物:40%の場合

タンパク質:25×4=100
脂質:12×9=108
炭水化物:40×4=160
合計368(kcal)

以上で栄養素ごとの代謝エネルギー量と
総カロリーを算出することができました。
後は栄養バランスを計算するだけです。

第3ステップ 3大栄養素の栄養バランス(PFCバランスを算出)

第2ステップまでで、
栄養素ごとのエネルギー量と総エネルギー(カロリー)を算出できました。
最後に総エネルギー量を100として、
それぞれの栄養素の配分を計算することで栄養バランスを算出することができます。

3大栄養素の栄養バランスの計算 
それぞれのエネルギー量÷総カロリー×100

タンパク質のエネルギー量:100
脂質のエネルギー量:108
炭水化物のエネルギー量:160
総カロリー:368kcalの場合

タンパク質の栄養バランス:
100÷368×100=27,17%
脂質の栄養バランス:
108÷368×100=29.35%
炭水化物の栄養バランス:
160÷368×100=43.48%

3大栄養素の栄養バランス

タンパク質:27.17%
脂質:29.35%
炭水化物:43.48%

以上で栄養バランスの計算は完了です。
ちなみに、
この計算方法は人間食でも当てはめることができます。

健康のために糖質制限などを行っている方は、
覚えておいて損はないので是非一度試してみてくださいね。

まとめ

3大栄養素についてのまとめ

  • 犬は肉食よりの雑食で、人よりもタンパク質の必要量が多い
  • 平均的なドッグフードはタンパク質25% 脂質12%前後の栄養素が配合されている。
  • 高タンパク高脂質のほうが犬の食いつきが良い傾向がある。
  • 栄養バランスの計算は人間食にも有効

今回は理想的な3大栄養素のバランスを考察してきました。
ただなかなか自分で計算するのは大変だと思うので、
ドッグフード選びの際は
是非当サイトの栄養バランス欄を参考にしていただけたら嬉しいです。

興味のある人は是非、ご自身で栄養バランスを計算してみてくださいね。




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